【解説】短時間正社員のキャリアについて
育休からの復職後、短時間勤務制度を利用しながら働き続ける女性社員が増えてきました。しかし、両立することに配慮するあまり、太田さんのように、仕事へのチャレンジ意欲がある人に対しても、本人の能力・スキルに比べて軽易な仕事だけを配分するようなケースが少なくありません。
このような過度な配慮が続いてしまうと、正社員としての能力開発に必要な仕事経験を積むことができず、長期的なキャリア形成においてマイナスの影響を及ぼしてしまいます。
仕事配分については、働く時間が短くなる分、業務量を調整する必要がありますが、業務内容や質については、フルタイム勤務の時と極力変えないようにしましょう。短時間勤務であっても、本人の能力・スキルを活かせる役割や業務内容を任せることで、仕事意欲の維持・向上が期待できます。
一方、短時間勤務社員の中には、能力・スキルを活かせる仕事を任せられても、育休に入る前の働き方と比較し、自信をなくしたり、将来の展望を描けなくなったりする人もいます。
短時間勤務社員にキャリア形成意欲を持たせるには、上司と本人で将来のキャリアビジョンを共有し、フルタイム勤務の時のように働けなくても、ビジョンに紐づけながら、現在の仕事の意義について対話し続けることが大切です。実際に、育児・介護休業からの復職時の能力開発やキャリア形成を重視している企業は、中長期的な視点でキャリアを考える機会を積極的に提供する傾向にあります(図ご参照)。
自社で、キャリアを考える機会をつくることが難しい場合は、地方公共団体や各地域の男女共同参画センターが提供している講座やセミナーを活用されることをお勧めします。他企業社員との交流を通じて、視野が広がることで、短時間勤務社員が前向きにキャリアを考えるきっかけを得ることが期待できます。
また、厚生労働省「短時間正社員制度導入支援ナビ」(https://part-tanjikan.mhlw.go.jp/navi/)では、短時間正社員制度の運用手順の解説や企業事例などを紹介しています。こちらも是非、ご活用ください。
出所:三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング「平成 30 年度仕事と育児等の両立に関する実態調査のための調査研究事業(企業調査)」
(厚生労働省委託事業)平成 31 年 2 月