第1回 企業におけるダイバーシティとは
労働人口の減少による人材確保難を背景として、企業におけるダイバーシティ推進が加速しています。
具体的には、女性、高齢者、障がい者、外国人材など、これまで日本の企業においてマイノリティな存在だった層を採用し、定着を支援し、活躍を促す取組みです。ただ一部の企業には、多様な人材を採用すれば企業のダイバーシティが推進される、という誤解がみられます。ダイバーシティ推進は、新しいタイプの人材を採用すれば実現できるものではありません。
大事なのは、これまで女性などが定着・活躍できなかった原因がどこにあるのかを探り、自社の制度やマネジメント、風土などを変えていくことにあります。企業が、これまでのままであれば、新しい人材を採用しても、結局は定着・活躍できないでしょうし、そうした状況が続けば、早晩採用すらできなくなるでしょう。
「ダイバーシティ推進によりイノベーションが起こる」と言われますが、これも新しい人材を採用しさえすれば、その人たちの新しい発想でイノベーションが起こる、と期待するのは危険です。従来の組織のままでは、新しいタイプの人材は従来の仕事のあり方や発想に取り込まれてしまうか、特別な存在として過度な配慮で十分仕事をさせてもらえず、活かされない可能性が高いです。女性が子育てにより時間制約社員になることで、一人前に仕事をさせてもらえず、公正な評価やキャリア形成が期待できない組織が未だに多いように。
ダイバーシティ推進でイノベーションが起こるという構造は、まずは、多様な人材を受け入れるために既存の組織そのものが変わることで起こる、そしてさらに、新しい組織の中で多様な人材が多様な働き方や価値観を受容されつつ能力発揮をすることで起こる、ということです。そういう意味では、本気でダイバーシティを推進しようとする企業には、短時間勤務制度などの両立支援を利用しつつもキャリア形成が可能な人事施策の導入が期待されます。
しかしながら、現状ではそうした施策を導入している企業は3割程度にとどまっています(下図参照)。