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村尾氏が語る「ジェンダー平等の実現」のために中小企業ができること

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村尾氏が語る「ジェンダー平等の実現」のために中小企業ができること

SDGs プロフィール

ブランド戦略コンサルタント
村尾隆介氏(むらお・りゅうすけ)氏


小さな会社のブランド戦略の専門家。 中小企業のブランド戦略ブームを起こしたブランディングの第一人者。企業だけでなく自治体ブランディングも手がける。企業CMの脚本・演出家としても多くの映像作品を生み出している。 『今日からできる! 小さな会社のSDGs 』(青春出版社)など著書多数。
 
コンテンツ

ジェンダー平等は日本の会社が特に目指すべき課題

ジェンダー平等とは、「男女を平等に」とか、「LGBTQ+の人を理解する」というだけではありません。ジュークアンリミテッド株式会社の事例の、「アライ」の話でも触れたように、ジェンダー平等の根本にあるのは「男/女らしさ」や「男/女らしく」を求めない、ということです。
性別で業務を分けないというのは欧米では当たり前のことです。日本ではいまも女性従業員が来客にお茶出しをする会社がありますが、私が仕事で訪れる欧米の会社では「飲み物はそこにあるから好きにとって」という感じで、飲み物を出してくれる人はいません。 そんな世界の潮流をふまえ、例えば日本航空(JAL)では機内アナウンスでの英語の呼びかけを「レディース&ジェントルマン」から「ハロー、エブリワン」に変えたと聞きます。「大企業だからできること。自分たちの会社には関係ない」と思うのは間違いで、日本の市場が小さくなる中、これからは中小企業も世界を視野に入れるべきです。2021年の日本のSDGs達成度を見てみると、「ジェンダー平等」は最大の課題の一つであり、取組みの強化が必要だとされており、日本の会社が特に目指すべき課題といえるでしょう。
では、実際に何を行えばいいのでしょうか。第一歩として例えば、LGBTQ+についての本を読む読書会を開いたり、従業員が「アライ宣言とは何か」について調べて勉強会を行ったり、LGBTQ+の当事者を招いて座談会を開いたり、といった取組みから始めてはいかがでしょうか。また手軽にできることとして、社内で互いに「さん」づけで呼び合うルールをつくることをおすすめします。派遣社員を「おい、派遣」などと呼ぶ人を放置するような旧態依然とした会社は、時代から取り残されてしまいます。年齢、性別、社内でのポジション、雇用形態などに関係なく「さん」づけで呼び合うだけでも、ジェンダー平等の実現に一歩近づくでしょう。

ジェンダー平等の取組みがもたらすビジネスへの影響

ジェンダー平等への取組みはビジネス面での効果も期待できます。特に大きな効果があるのが「採用」です。いまの若者はこの問題に敏感で、LGBTQ+への理解も進んでいます。LGBTQ+にやさしい会社は、若者から「働きやすい会社」として支持されているのです。前回前々回取り上げた2社のように、男性社員の育休取得を推進している、LGBTQ+にフレンドリーな活動をしているなど、ジェンダー平等への取組みを会社のホームページなどを使って積極的に発信することで、求人サイトにエントリーが集まる可能性が高くなります。
ジェンダー平等への取組みは売り上げにも直結します。なぜならLGBTQ+の人は、LGBTQ+フレンドリーな会社を選んで商品やサービスを買う傾向が強いからです。毎年6月、世界各地でLGBTQ+の権利を啓発するイベントが行われる「プライド月間」になると、欧米の有名スポーツシューズの会社やアパレルメーカーが、LGBTQ+のシンボルであるレインボー柄のシューズやウェアを販売する理由は、ビジネス的側面も大きいのです。
日本でも観光業界、ホテル業界ではLGBTQ+フレンドリーな対応に力を入れ、売り上げを伸ばしているところがあります。ホテルグランヴィア京都はとても早い時期にLGBTQ+フレンドリーであることを宣言し、熱心に活動に取り組んだ結果、世界のLGBTQ+の旅行者が同ホテルを宿泊先に選ぶようになりました。海外展開を考える会社は、海外でのビジネスをスムーズに進めていくうえでも社内のジェンダー平等を進める必要があるでしょう。

社内が明るく働きやすい環境に

ジェンダー平等への取組みは社内にもよい効果を生み出します。「女性従業員にお酌をさせるのはNG」「女性従業員が積極的に発言できるようにしよう」と発信し続けることによって少しずつ従業員の意識が変わり、ジェンダーに縛られない人が増え、社内の雰囲気が明るくなっていきます。
セクハラやモラハラなどのハラスメントがあった場合は、それを軽減していく効果もあります。ジェンダー平等は性別や性的指向にかかわらず、「互いを尊重すること」。それを学ぶ中で、ハラスメントができない雰囲気が醸成されていきます。ジェンダー平等に取り組み、社会に貢献することはもちろん、従業員にとって働きやすい環境をつくり、採用やビジネスでもよい効果が生み出していければ素晴らしいですね。

SDGs



村尾式 SDGsを始めるための基本4ヵ条

S:シリアスになりすぎず、いまやっていることの棚卸しから始める
新たに何かを始めなくてはいけないというわけではありません。いままで何気なくSDGsを実践してきた中小企業は少なくないのです。まずは自分たちが実践してきたことから、「これもSDGsだった」という活動を探してください。それを強化し、対象を広げていきましょう。

D:どんどん発信し、いいことをしているのを隠さない
日本人は奥ゆかしく、寄付なども黙って行うのをよしとします。しかしSDGsは2030年までに実現するというゴールが決められ、それまでにやりとげなければいけない活動です。そこで大事になるのが発信すること。「あそこの会社がやっているならうちも!」と互いに刺激し合い、切磋琢磨することで活動が広がっていきます。

G:がんばりすぎない。続けることが大事
SDGsに取り組む会社の中には、“大きなイベントを1回だけやって終わり”というケースもしばしばあります。がんばりすぎて燃え尽きてしまうのですね。SDGsは続けることが大事です。一度何かをしたからといってすぐに社会は変わりません。日々コツコツと活動を続ける中で、徐々に変わっていくというものです。大きすぎる目標は立てず、これなら継続できるという観点から自分たちの活動内容を決めましょう。

s:すべてのことを採用につなげる視点で
中小企業にとってSDGsの最大のベネフィット(利益)は採用活動が円滑になることにあります。いまの若者が就職したいと思うのはSDGsに熱心に取り組む会社です。SDGsの活動やその成果について、しっかり若者に伝わるようにしましょう。ホームぺージで活動を紹介したり、会社のロゴにメッセージを入れたりすることも大切です。こうしたポジティブなイメージは中小企業が採用をより円滑にできる力となります。


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