第3回 企業におけるLGBT対応
2016年8月、「事業主が職場における性的言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」、いわゆるセクハラ指針が改正されました。改正された指針では、「被害を受けた者の性的指向又は性自認にかかわらず、当該者に対する職場におけるセクシュアルハラスメント」も同指針の対象であることが明記されました。性的指向とは、どの性別の人を好きになるかを示す概念です。性自認とは、自分自身の性に関する認識(いわゆる、こころの性)を示す概念です。
LGBTという言葉を聞く機会が多くなったことかと思います。「LGB」は性的指向に関わるもので、「L(レズビアン)」は女性で女性を好きになる人、「G(ゲイ)」は男性で男性を好きになる人、「B(バイセクシャル)」は女性も男性も好きになる人のことを言います。「T(トランスジェンダー)」は、性自認に関わるもので、出生時に割り当てられた性別(多くの場合、生物学上の性別や戸籍上の性別)とこころの性が一致しない人のことを言います。このように性的指向と性自認は全く異なる概念であり、「LGB」と「T」の困りごとも異なりますが、両者に共通することは、職場において自分らしく振る舞うこと、自分らしく働くことが難しいということです。無理解や差別的言動が、就労意欲に影響を及ぼしてしまいます。
例えば、G(ゲイ)の場合、「男性は女性が好きになって当たり前」という認識に基づいた言動を見聞きして、自分の個性を否定されてしまいます。また、「T」の場合、自身が認識している性(こころの性)で自分が扱われないこと(例えば、自分は女性だと自認しているのに男性として扱われること)により、自分の個性を否定されてしまいます。
自分らしく働くことができないことは、当事者にとっては大きな不幸であり、場合によっては人権の侵害にもつながります。一方、企業にとっては、採用難・人材難のなか、向き合うべき課題の1つといえます。LGBTやその他の性的マイノリティに属する人は人口の5~8%を占めると言われおり、そうした人材が活躍する可能性を逸してしまうからです。LGBTに関する認知の高まりも背景に、今後、取組を行う企業が増えていくと考えられます(図表)。
性的指向・性自認に対応するということは、ダイバーシティ推進、つまり、誰もが働きやすい職場環境を整えるという方針からすれば、特別なことではないともいえます。一方で、性的指向・性自認やLGBTに関して、馴染みがないと感じる人も多いでしょう。本テーマに関する学習をしてみる、外部の講師を交えた勉強会を開催してみるなど、まずは「知る」ところから始めてみてはいかがでしょうか。