国が2018年に実施した調査(
*1)では、男性が育児休業を取得しなかった理由の上位が「会社で育児休業制度が整備されていなかったから」「収入を減らしたくなかったから」「職場が育児休業制度を取得しづらい雰囲気だったから」ということがわかりました。そのため、2022年に施行された改正育児・介護休業法では、主に男性の育児休業を取得しやすくするために、事業主に対する措置の義務と、制度の柔軟化を行いました。(図表1参照)
育児休業の制度を就業規則に明記していたとしても十分周知されているとはいえない状況や、雇用保険の育児休業給付や社会保険料が免除になることを理解していない人がいるため、これらの情報を会社のほうから伝えることが義務化されたわけです。また休業を希望していても、職場のメンバーに迷惑をかけてしまうのではないかと遠慮して諦めてしまうケースをなくすために、職場環境を整備することも義務化されました。
これらの法改正の結果、令和5年度の男性の育児休業取得率は30.1%と過去最大となりました。今後も取得する人が身近に増えることが予想されますので、男性の育児休業は急速に普及しているという現状を特に中小企業では認識しておいたほうがよさそうです。
*1 厚生労働省委託調査 三菱UFJリサーチ&コンサルティング「仕事と育児等の両立に関する実態把握のための調査研究報告書」平成30年度
(図表1)2022年施行 改正育児・介護休業法の概要
人手不足に悩み、育児休業どころではないと考える中小事業主や管理職のなかには、長時間労働や休みなく働くことを前提とした働き方のまま事業運営をされている方がいます。しかし、結婚している世帯では夫婦共働きが標準となっている現在、働く人に大きな負担を強いていることに早く気づいて運営方法を変更していく必要があります。育児休業が取れない会社では、おそらく介護やその他の私生活の理由などでも休みづらいため、人材が流出してしまう可能性もあります。
図表2は大学生に行った育児休業に対する意識調査ですが、今春の新社会人は育児休業を取って子育てしたい人が男女でほとんど差がありません。こうした若者が社会にどんどん増えていく中、男性の育児休業が取得できない会社が学生から選ばれるのは厳しいでしょう。
(図表2)株式会社マイナビ「2024年卒大学生のライフスタイル調査」
株式会社マイナビ「2024年卒大学生のライフスタイル調査」
https://career-research.mynavi.jp/reserch/20230214_44672/#i-5
男性の育児休業取得のハードルを下げるには、業務改善が考えられます。属人化させない、マニュアル化しておく、デジタルツールの積極的な活用で生産性を上げる、不要な業務の洗い出しをしておくなどにより、誰かが急に休んでも慌てなくてすむ状況をつくることができます。
また、職場内での良好な人間関係によって互いの仕事の状況がわかっていると、助け合える風土になりますし、他部署の人と仕事をするときにも効率のよい連携ができ、結果として業務効率が上がることが多々あります。
心身ともに疲弊してギスギスした職場よりも、良好な人間関係の中で助け合える職場のほうが、多くの人にとって魅力的なはずですし、そうした組織では働く人が高いパフォーマンスを発揮してくれることと思います。