顧客ニーズと生産現場がかい離した人形業界の現実を変えていきたい
㈱ふらここは、原英洋氏が2008年に設立した、雛人形・五月人形など節句人形の製造販売を行っている会社です。
㈱ふらここの創業以前、原氏は、生家の人形専門店で働き、節句人形の製造と販売に携わっていました。そこで直面したのが「既に衰退産業になってしまった人形業界において、お客さまが求める商品が提供されていない現実」(原氏)であり、それを何とかして変えていきたいと考えていました。
日本人形の製作はパーツごとに細かく分業化されていて、それぞれ別の職人がつくっています。人形専門店は、それぞれの職人から仕入れたパーツを組み合わせ、自社ブランドの人形として販売しています。日本人形業界はこうした独特の「製販分離体制」で成り立っていたため、販売の現場の声が製造現場に届くことはほとんどありませんでした。また、節句人形は買い替えることが少ない商品でリピート率が低いため、そのシーズンに売り切ることを重視し、顧客満足をあまり顧みない業界でもありました。そのため、一般的な人形販売店のクレーム発生率が約10%にも達するような状況で、原氏はこの現実を何とかして変えていきたいと考えていました。
さらに、人形業界が顧客のニーズの変化に対応できていない状況にも、原氏は強い危機感を抱いていました。
「ここ数十年の間に、子どもが生まれて最初に迎えるお節句(初節句)に飾る雛人形や五月人形の買い方が、祖父母がかわいい孫のために選んでプレゼントするという購入形態から、子どものお母さんが自分の好みに合わせて商品を選択するという購入形態に変わってきました。そんな大きな市場の変化が起きたにもかかわらず、いまだに祖父母向けの、細面で大人びた美しい顔のお人形や、豪華な段飾りがつくられ、販売されています。私は、本当にお客さまに満足してもらえるものを、丁寧につくって届けたいと思い、独立することを決意しました」
㈱ふらここが手がける雛人形は伝統的な人形に比べ、かわいらしい表情とコンパクトなサイズ感が特徴です