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第1回 旧来の事業モデルからの転換と女性人材の活用

人材活性化

あんしん財団広報誌 連動企画
中小企業の人材活性化に向けたいきいきと働ける職場づくりとは
~株式会社ふらここにおける女性人材活躍の取組み~

広報誌タイアップ企画・中小企業経営者インタビュー記事
あんしん財団の広報誌『あんしんLife』で紹介した「人材活性化に向けたいきいきと働ける職場づくり」についての深堀記事をお届けします。





プロフィール(人材活性化)

掲載企業:株式会社ふらここ 代表取締役  原 英洋氏

1963年東京生まれ。100年以上続く人形師の家庭で育ち、1987年、23歳で家業を継承。2008年に独立し、株式会社ふらここを設立。
事 業 所 名:株式会社ふらここ
本社所在地:東京都中央区東日本橋3-9-8 furacoco house
設 立 年:2008年 従 業 員 数:27名(男性1名/女性26名)
事 業 内 容:雛人形・五月人形を中心とする日本人形の製造販売
HP:https://www.furacoco.ne.jp/


監修者:グレース・パートナーズ株式会社代表 人事労務コンサルタント・社会保険労務士 佐佐木 由美子氏

中央大学大学院 戦略経営研究科修了、MBA取得。アメリカ企業日本法人を退職後、2005年3月にグレース・パートナーズ社労士事務所を開設し、現在に至る。女性の雇用問題に力を注ぎ、働く女性のための情報共有サロン「サロン・ド・グレース」を主宰。新聞・雑誌等、多方面で活躍。
HP:https://gracepartners.jp/








第1回 本文1(人材活性化)

顧客ニーズと生産現場がかい離した人形業界の現実を変えていきたい


㈱ふらここは、原英洋氏が2008年に設立した、雛人形・五月人形など節句人形の製造販売を行っている会社です。

㈱ふらここの創業以前、原氏は、生家の人形専門店で働き、節句人形の製造と販売に携わっていました。そこで直面したのが「既に衰退産業になってしまった人形業界において、お客さまが求める商品が提供されていない現実」(原氏)であり、それを何とかして変えていきたいと考えていました。

日本人形の製作はパーツごとに細かく分業化されていて、それぞれ別の職人がつくっています。人形専門店は、それぞれの職人から仕入れたパーツを組み合わせ、自社ブランドの人形として販売しています。日本人形業界はこうした独特の「製販分離体制」で成り立っていたため、販売の現場の声が製造現場に届くことはほとんどありませんでした。また、節句人形は買い替えることが少ない商品でリピート率が低いため、そのシーズンに売り切ることを重視し、顧客満足をあまり顧みない業界でもありました。そのため、一般的な人形販売店のクレーム発生率が約10%にも達するような状況で、原氏はこの現実を何とかして変えていきたいと考えていました。

さらに、人形業界が顧客のニーズの変化に対応できていない状況にも、原氏は強い危機感を抱いていました。

「ここ数十年の間に、子どもが生まれて最初に迎えるお節句(初節句)に飾る雛人形や五月人形の買い方が、祖父母がかわいい孫のために選んでプレゼントするという購入形態から、子どものお母さんが自分の好みに合わせて商品を選択するという購入形態に変わってきました。そんな大きな市場の変化が起きたにもかかわらず、いまだに祖父母向けの、細面で大人びた美しい顔のお人形や、豪華な段飾りがつくられ、販売されています。私は、本当にお客さまに満足してもらえるものを、丁寧につくって届けたいと思い、独立することを決意しました」

㈱ふらここが手がける雛人形は伝統的な人形に比べ、かわいらしい表情とコンパクトなサイズ感が特徴です








第1回 本文2(人材活性化)

顧客重視、マーケット志向の事業モデルで、製販一体事業に乗り出す


「顧客のニーズに合った商品を、丁寧につくって届ける」という明確な理念のもと、原氏は㈱ふらここを立ち上げ、自社で企画・デザインした人形を、思いを共有する人形職人たちの協力を得て製造し、販売する事業に乗り出します。
その事業戦略は、次のようなものでした。

①実際に商品を選ぶ若い母親の好みに合わせた赤ちゃん顔の人形、現代の住宅事情に対応したコンパクトなサイズの雛人形・五月人形をつくる
②高いクレーム率の原因となっていた納品された人形をそのまま販売する従来の手法を改め、細かな部分の検品作業と最終仕上げを自社で徹底して行う
③値引きを前提にした高い価格設定という業界の慣行には従わず、最初から適正な価格で販売し、値引きは一切行わない
④オンラインショップでの予約を中心に販売し、「返品保証」を付帯するとともに、丁寧な顧客対応・アフターフォローを徹底する


㈱ふらここの事業モデルは、それまでの業界の常識や商習慣を離れ、まさに顧客重視、マーケット志向のものです。原氏には、この事業モデルが成立する見込みがあったといいます。

「㈱ふらここの創業時には、『かわいいお顔をしたコンパクトサイズの雛人形・五月人形』の市場はまだ人形業界には存在せず、お客さまにも認知されていませんでした。そのため、『ちょっと変わった雛人形・五月人形』と受け取られてしまい、従来タイプの人形を製造していた年配の男性職人さんたちに協力を求めるのは簡単なことではありませんでした。創業当初は相手にされないことも少なくなかったのです。 しかし、当時、私の祖父が制作していた人形の作風が子どもらしい表情で、中にはとてもかわいい人形もあり、そうしたものに若いお母さまが大変興味を示されていました。これからは、こうしたお人形が若いお母さま方から支持されるのだろうと、お客さまと対面しながら感じていました」

 ㈱ふらここの事業モデルと女性活躍の推進







第1回 本文3(人材活性化)

事業モデルの実現には、顧客に近い若い女性の力が必要だった


㈱ふらここの事業モデルを軌道に乗せるには、どうしても女性の力が必要でした。この点について、原氏は次のように語っています。

「商品を実際に選んで購入してくださる若いお母さまの好みに合った商品を製造・販売したい。そのためには、ターゲット層の好みを身近な感覚として受け取ることができる同世代の若い女性の力が、どうしても必要です。そのため、私は創業時から女性中心の採用を続けてきましたし、その女性社員たちが十分に力を発揮できるよう、女性が働きやすい環境の整備に取り組んできました」

商品の企画・デザインのために、顧客に一番近い若い女性の人材を必要としているだけではありません。きめ細かな検品作業、丁寧な顧客対応を確実に実施する体制を構築するためにも、女性人材が必要でした。

「女性は本当に真面目で、丁寧に、細かな部分もおろそかにせず、仕事に取り組んでくれます。その意味でも、女性活躍の推進は当社の戦略を実現するために欠かせない取り組みであり、必要不可欠な要素であるといえます。 採用にあたっては、女性だからということで特にこだわっていたり、気配りをしたりしている点はないのですが、正社員の門戸はかなり狭くしています。資格や表面的なスキル、テクニックではなく、仕事に取り組む姿勢を一定の基準で評価し、高いポテンシャルを持っていることをしっかり確認して採用しています。 現在、当社のパートを含めた社員27名中、26人が女性です。その女性社員たちが、製造部の商品企画課・生産管理課・制作課、販売部販売課、物流部ロジスティックス課、経営企画部のマーケティング課・人事課・経理課、3部8課のすべての部署の業務を担当し、それぞれの裁量と責任を持って、主体的に仕事を進めてくれています」

㈱ふらここは、その事業モデル実現の必要性から、必然的に女性の採用と積極的な登用を進めてきたという面もあるでしょう。しかし、女性にできない業務はないということ、女性が活躍することが企業にとっての強みになるということを、㈱ふらここの実績が物語っているのではないでしょうか。


新商品の開発に向けて、意見を交わす女性社員たち







第1回 専門家コメント(人材活性化)

社会保険労務士 佐佐木氏の注目ポイント



女性に魅力的な雇用環境が人材募集に良い効果をもたらしている
㈱ふらここの正社員の採用倍率は約100倍にも達するということですが、昨今の売り手市場から考えると、非常に高い実績です。応募があるからこそ、それだけ厳しい採用選考基準を設けられるということであり、求める人材においてミスマッチが少なく済んでいることが、「長く働ける職場環境」にもつながっていると考えられます。 女性が働きやすい環境を整備されていると伝わっていることも、人材募集の際に良い効果をもたらしているのではないでしょうか。職場で生き生きと働く女性のロールモデルがすでに存在しているのも大きなことで、そうした社員の声を聞けるとすれば、より一層の効果があると考えます。


記事作成日

※記載されている情報は2020年6月時点のものです。




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