LESSON2.女性が少ない職場はチャンスがいっぱい!
~女性が少ない職場での不安とチャンス~
Q.「伝統的工芸品 豊橋筆」の筆職人では、唯一の女性とお伺いしました。女性が少ない職場での苦労や不安はありましたか?
A.苦労は、実はあまり感じていません。
・・・あったかもしれませんが、忘れてしまうくらい今の仕事が楽しくて、やりがいがあります。強いて言うならば、女性は帰りが夜遅くなっては危険ということで、最初の頃はもっと仕事をしていたくても帰った方がいいと師匠に言われ、しぶしぶ帰っていたことです。
むしろ良いことの方が多く、女性職人はあまりいないからか、どこに行っても注目してもらえます!
また、言葉にすることや、伝え方などは女性の方が得意な人が多い気がします。
これからは、良いものを作るだけでなく、伝え方も大切だと感じています。
不安は女性であれば共通の悩みだと思いますが、やはり結婚・出産です。
「子どもができても、家で仕事をしているから子育てができて良いね」と言われることがありますが、仕事場に触られたら困るものがたくさんあり、保育園に預けなければ仕事をすることは難しいと思います。
また、女性職人自体が少なく、さらに子育てをしている人はもっと少ないので、情報を得にくいことが不安です。今はSNS等を駆使して情報を収集しています。
Q.結婚・出産は働く女性共通の悩みなのですね。仕事についての悩みがある場合は、どのように解決していますか?
A. この仕事の難点は、同じ境遇の人が少ないので他の方に悩みを共感されにくい点かと思います。
その悩みを解消するため、私は3年程前から「凛九」という女性職人のグループに参加しています。
凛九は男性のイメージが強い伝統工芸の世界で、9人の伝統工芸を受け継ぐ女性職人たちで作ったグループです。
女性らしい、しなやかな感性でたくさんの人とリンクして伝統工芸の世界を表現し、多くの人にその魅力を届けたいという思いで活動しています。
凛九は私を含め、雑誌の座談会で出会った何人かの「同世代の女性職人と話せる場があるといい」という声からできたグループなのですが、そこでは似たような状況下の職人ばかりです。ちょっとした愚痴、相談、などを聞いてもらえたり共感してもらえます。それはちょっとしたことかもしれませんが、かなり心が軽くなります。
女性にとっては、やっぱりおしゃべり!共感してもらうことが大切だと感じます。
凛九のメンバーやそれ以外の方でも、働きながらしっかり結婚、子育てをしている方々のお話、お姿は大変勉強になります。
悩みを相談できる人が職場にいなければ、私のように同じ境遇の人を外で見つけるのも良いと思います。
仕事もプライベートも相談できる凛九メンバーと。
Q.悩みを共感し合える人や相談できる人を自分で探す・・・SNSが発達している今だからこそ、自分の拠り所を見つけやすいかもしれませんね。
前の質問で「伝え方は女性の方が得意かもしれない」と伺いましたが、他に“女性ならではの強みを生かせた!”と感じたことはありますか?
A. 女性だからなのか、私は人と接することやお話することが好きです。あと、女性だから?!髪が長いのでお団子にして最近は筆を髪に刺しています。ふざけているように見えますが、インパクト絶大です♪
今まで職人というと男性社会のイメージが強かったと思います。フフッと笑える親しみやすいイメージづくりが出来たのは女性だったから・・・かもしれません。
~“自分らしく働く”ために~
Q.ワークショップで筆を髪に刺している姿を初めて見たときは、私も衝撃でした。そんな筆のかんざしが似合う、中西さんが“自分らしく働く”ために、大切にしていることを教えてください。
A.自分らしく働くために、独りよがりにならないように心がけています。私は生の意見を大切に、使い手に寄り添うことを大切にしているので、自分のこだわりよりも世間から求められている物を丁寧に作っていきたいです。あとは笑顔!筆づくりを楽しむ心は忘れないようにしています。
心のこもったメッセージを書いてくださった中西さん。
Q.最後に、「“自分らしく働く”ことに対して悩んでいる方」にメッセージをおねがいします。
A.「笑顔、思いやりを忘れずに一緒に仕事を楽しみましょう!」
好きな仕事に就けても環境だったり、イメージと違うことはあると思います。それは運もあると思うので、なにかを悪く思うより、少しでも自分が変えていけることを考えたり、考え方を変えていけたらいいかもしれません。悩んでいる時点で、悩むことに脳みそを使う余力があると思うので、そのパワーを新しい何かに使えたら状況は変わるかもしれません。
私はものづくりが好きだったので今の仕事が天職だと思っています。
自分の仕事を天職だと思い、自分らしく働ける人が増えたら嬉しいです。
第2回 中西由季さん
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LESSON1. 好きなことを仕事にする苦労とやりがい