【解説】制度が円滑に運用されるための職場環境整備
社員が離職することなく働き続けられる環境の整備に向けて、両立支援制度を整備し、社員に周知することは大切です。また各職場でも、管理職を中心に両立支援制度を利用しやすい雰囲気をつくることも重要です。しかし、いくら制度を整え、周知を図り、利用を促しても、恒常的に長時間労働となっている職場では、実際に制度を利用することはとても難しいでしょう。
第8回「職場環境・風土の改善 周りへのフォロー編」では、短時間勤務者のサポートの際に職場内での仕事の再配分を行うことや、急な休みなどに備えたサポート体制づくりが必要であると解説しました。ただ、職場全体の仕事量がそもそも非常に過剰な場合、仕事の再配分先がありません。あるいは、特定の社員しかできない仕事があると、その社員の仕事を他の社員に割り振ることができません。最近では男性で育休を取得する社員も増えつつありますが、業務が多忙であることや自分にしかできない仕事であることが、育休取得の障害となっています。また介護を理由とした離職も少なくありません。男女問わず、必要に応じて両立支援制度を利用することのできる職場環境の整備が求められています。
そのためには、長時間労働の是正に向けて業務を見直したり、社員間でサポートし合えるよう多能工化を図るなど、働き方改革に取り組むことが重要です。最近では在宅勤務やリモートワークもひろく実施されるようになりましたが、日頃から生産性の高い働き方であることが円滑な運用につながります。生産性の高い働き方は、両立支援制度の利用のみならず、すべての社員の時間・場所の柔軟な働き方の実現につながります。
【男性・正社員】育児休業制度を利用しなかった理由:複数回答(n=204)
出所:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「平成30年度仕事と育児等の両立に関する実態調査のための調査研究事業(労働者調査)」(厚生労働省委託事業)平成31年2月