【解説】多様なWLB(ワーク・ライフ・バランス)ニーズが尊重される職場へ
新型コロナウィルスの感染拡大防止の取組みが続く中、2021年1月から11都府県に再発令された緊急事態宣言においても、テレワークの活用が要請されました。みなさんの職場では、テレワークを活用できたでしょうか。できていないとしたら、何が原因なのでしょうか?
一番難しいと思われるのは、製造や販売、医療・介護など、職場から離れられない業種・職種でしょう。しかし、そうした組織でも、一部の職種や一部の業務に限ってテレワークを活用することは可能です。全部テレワークに移行できないのなら導入してもムダだとか、職種間で利用に差が出てしまうのは不公平だ、という理由であきらめるのは得策ではありません。テレワークは手段であって、目的は、感染防止のために「密を避けること」です。各企業で、テレワークを活用できる職種・部署の人だけでも活用すれば、公共交通機関や都市部の密を減らせます。それは、通勤を余儀なくされる人々にとってもリスク回避になります。職場でなければできない仕事が主である人も、一部の事務系・管理系の業務をテレワークで実施することができれば、職場にいる時間を減らすことができ、時差出勤等も活用しやすくなり、職場や通勤時でのリスクを下げられる可能性があります。テレワーク以外の働き方も組み合わせて、それぞれの仕事の特性に応じた形で、「密を避ける」という目的を達成する工夫をすることが大切です。
すべての社員が何らかの柔軟な働き方を選択し、「密を避ける」働き方ができるようになれば、そうした働き方を活用してすべての社員がワーク・ライフ・バランスを実現することや、これまでよりも幅広い人材を受け入れることもできるようになります。
こうした取り組みを全社員を対象に推進するためには、これまでご紹介してきたように、多様な働き方に応じた人事制度や職場のマネジメントの整備も欠かせません。図表にあるように、人事施策の見直しまでを視野に入れているのは大企業が多く、この点で中小企業は後れを取っています。コロナ禍での困難な経験を活かし、アフターコロナの時代にダイバーシティ経営を通じて飛躍するために、すべての企業にとって、今、柔軟な働き方を可能とする取組みを可能な限り進めておくことが重要なのです。
正社員(無期契約労働者)が両立支援制度を利用しながらキャリア形成できる人事施策の検討:企業規模別
注)従業員101人以上の企業について集計。
出所:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「平成30年度仕事と育児等の両立に関する実態把握のための調査研究(企業調査)」(厚労省委託事業)平成31年2月