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第5回 中小企業におけるダイバーシティ推進

内容(ダイバーシティ)

第5回 中小企業におけるダイバーシティ推進

カラフルな矢印を背景にスーツ姿の男女が走っているイラスト


 中小企業の経営者や人事の方からは、ダイバーシティやワーク・ライフ・バランスの推進について「中小企業では大企業のようには取り組む余裕がない」と言うお話をよくうかがいます。
 本当にそうなのでしょうか?確かに、大企業は目に見える形で「制度」が充実しています。社内研修やイベントをよく行っています。しかしそれは、社員が多いために、柔軟な働き方のニーズなどに対し、個別に臨機応変な対応をするわけにはいかない、という事情にもよります。


 育児・介護休業法の改正で育児期の短時間勤務制度導入が義務化され、女性活躍推進法で企業の計画策定が義務付けられたことで、大企業の取り組みはずいぶん進みました。しかし、かつては、中小企業の方が大企業よりも、結婚や出産で離職する女性は少なく、女性の正社員比率も高かったのです。それは、中小企業の方が、(制度は無くとも)社員の個別のワーク・ライフ・バランスニーズに応じた「柔軟な働き方」が可能な組織だったからです。
 ダイバーシティ推進において重要なことは、多様な社員の多様なニーズに応じて、柔軟な働き方が可能であること、上司が個々の部下と密にコミュニケーションをはかりながら多様なキャリア形成を支援すること、です。元々は、むしろ中小企業が得意としていたことなのです。


 確かに、中小企業では、自社独自で研修を行うことや、男性の育休取得推進のための休業補償をつけるようなことは難しいかもしれません。制度や研修といった取り組みだけをみてしまうと「できない」と思いがちです。しかしながら、大事なのは、どのような環境が実現しているか、です。
 中小企業では管理職の方たちに、会社の方針や新しいマネジメントを周知する際も、大企業ほど多くの研修やイベントを要することもないでしょう。社員全体が柔軟な働き方ができていれば、男性の育休取得推進のためだけにポジティブアクションを取る必要もないでしょう。 大企業のやり方にならおうとせず、自社の課題に向き合い、取りうる方策を選択すれはよいのです。ただし、これまで柔軟な働き方を制度化せず個別対応としていた企業では、できるだけ「見える化」して、対外的にアピールすることをお勧めします。制度にまでしなくても、様々な働き方をしている人がいるという事例の紹介でもかまいません。せっかくできていることが、「見えない」ために損をしている企業もあります。


 ますます採用が困難となる時代に、特に若者に向けて「柔軟な働き方」は大きな武器になります。自社で選択できる働き方の幅をできるだけ広げ、それを「見える化」することで、多様な人材を惹きつける組織を目指しましょう!


プロフィール(矢島氏)



【執筆者:矢島 洋子氏】

プロフィール
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
主席研究員/共生社会室室長/ 女性活躍推進・ダイバーシティマネジメント戦略室長/ 中央大学大学院戦略経営研究科客員教授

1989年 ㈱三和総合研究所(現MURC)入社。2004年~2007年 内閣府男女共同参画局男女共同参画分析官。少子高齢化対策、男女共同参画の視点から、ワーク・ライフ・バランスやダイバーシティマネジメント関連の調査・研究・コンサルティングに取り組んでいる。著作に、『ダイバーシティ経営と人材活用』東京大学出版会(共著)、『国際比較の視点から 日本のワーク・ライフ・バランスを考える』ミネルヴァ書房(共著)、『介護離職から社員を守る』労働調査会(共著)等。



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