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第4回 女性活躍推進法における一般事業主行動計画の策定方法

行動計画 第4回本文1

第4回 女性活躍推進法における一般事業主行動計画の策定方法


前回は、女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画の策定にあたって、自社の状況把握と課題分析について解説しました。そこで見えてきた課題について、目標と取り組み内容を社内で検討し、最終的に、一般事業主行動計画に落とし込んでいきます。今回はその方法について確認していきましょう。







行動計画 第3回本文2

行動計画策定のポイント


自社の状況把握および課題分析の結果を勘案して、行動計画を策定していくことになりますが、必ず①計画期間、②数値目標、③取り組み内容、④取り組みの実施時期の4つを盛り込まなければなりません。
常時雇用する労働者数が301人以上の事業主の場合、原則、下記の数値目標に関する項目の①と②項目の区分ごとに1つ以上を選択し、それぞれ関連する数値目標を定めた行動計画を策定する必要があります。2022年4月1日以降、常時雇用する労働者数が101人以上300人以下の事業主の場合、数値目標に関する項目のいずれか1つ以上の数値目標を定めた行動計画の策定が必要となります。


■数値目標に関する項目
①女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供
◆採用
・採用した労働者に占める女性労働者の割合(区)
・男女別の採用における競争倍率(区)
・労働者に占める女性労働者の割合(区)(派)
◆配置・育成・教育訓練
・男女別の配置の状況(区)
・男女別の将来の育成を目的とした教育訓練の受講の状況(区)
・管理職及び男女の労働者の配置・育成・評価・昇進・性別役割分担意識その他の職場風土等に関する意識(区)(派:性別役割分担意識など職場風土に関する意識)
◆評価・登用
・管理職に占める女性労働者の割合
・各職階の労働者に占める女性労働者の割合及び役員に占める女性の割合
・男女別の1つ上位の職階へ昇進した労働者の割合
・男女の人事評価の結果における差異(区)
◆職場風土・性別役割分担意識
・セクシュアルハラスメント等に関する各種相談窓口への相談状況(区)(派)
◆再チャレンジ(多様なキャリアコース)
・男女別の職種又は雇用形態の転換の実績(区)(派)
・男女別の再雇用又は中途採用の実績(区)
・男女別の職種若しくは雇用形態の転換者、再雇用者又は中途採用者を管理職へ登用した実績
・非正社員の男女別のキャリアアップに向けた研修の受講の状況(区)
◆取組の結果を図るための指標
・男女の賃金の差異(区)
②職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備
◆継続就業・働き方改革
・男女の平均継続勤務年数の差異(区)
・10事業年度前及びその前後の事業年度に採用された労働者の男女別の継続雇用割合(区)
・男女別の育児休業取得率及び平均取得期間(区)
・男女別の職業生活と家庭生活との両立を支援するための制度(育児休業を除く)の利用実績(区)
・男女別のフレックスタイム制、在宅勤務、テレワーク等の柔軟な働き方に資する制度の利用実績
・労働者の各月ごとの平均残業時間数等の労働時間(健康管理時間)の状況
・労働者の各月ごとの平均残業時間数等の労働時間(健康管理時間)の状況(区)(派)
・有給休暇取得率(区)
※下線部は状況把握における基礎項目(必ず把握すべき項目)
※(区)の表示のある項目は、雇用管理区分ごとに把握を行うことが必要
※(派)の表示のある項目は、労働者派遣の役務の提供を受ける場合、派遣労働者を含めて把握を行うことが必要


計画期間については、各事業主の実情に応じておおむね2年以上、2025年度までの期間で設定します。また、数値目標については、実数、割合、倍数など数値を用いるものであればいずれでも構いませんが、計画期間内の達成を目指すものとして、実情に見合った水準を設定するように留意してください。










行動計画 第4回本文3

目標・取り組み内容の考え方


行動計画には、数値目標に関する項目から選択した数値目標を設定します。自社の課題から取り組み内容を検討することが大切です。


ケース1:女性の管理職が少ない場合<評価・登用>


女性の勤続年数は男性と同程度でも、女性の管理職が少ない企業はいまだ多いといえます。この場合、目標として「女性管理職の割合を〇%にする」と掲げるケースは多いですが、それが絵に描いた餅とならないように、具体的な取り組み内容を設定することが求められます。
たとえば、女性社員からヒアリングを行い、自社にあった管理職育成プログラムを作成して定期的に実施することや、キャリアについて相談できる窓口を設置し、相談対応する社員にも適切な研修を受けてもらう(あるいはキャリアコンサルタントと契約する)、また公正な評価基準を設けて性別にかかわらず登用する仕組みを設けるなど、実践的な取り組み内容を検討することが重要です。


ケース2:残業が多く出産・育児で女性が退職してしまう<就業継続・働き方改革>


入社時における採用割合は男女に大きな差が見られないものの、残業が多いことから両立が難しいと考えてライフイベントを機に退職し、女性社員が定着しないという課題を抱えている企業もあります。
この場合、目標として「1ヶ月の平均残業時間を〇時間以内とする」と設定し、残業削減を図ることも有効です。取り組み内容としては、部門ごとに業務内容の見直しを実施し、効率化に向けての計画を策定することや、進捗状況を経営会議での報告事項とすることで全社の経営課題であることを意識づけることなど様々な取り組みが考えられます。


ケース3:女性の応募者が少なく女性比率が低い<採用>


男性のイメージが強い職場においては、女性の応募者が少ないことは珍しいことではありません。目標として「新卒の女性技術者を2名以上採用する」「全社員に占める女性割合を30%以上にする」など掲げてみてもよいでしょう。
そのために、取り組み内容として、会社案内や募集要項、さらに会社ホームページの見直しを図り、女子学生に向けて積極的な広報を行うことや、女子学生を対象とした現場見学会を行うことなど有効と言えるでしょう。将来的に、在宅勤務など柔軟な働き方を採り入れていくことで、出産後の就業継続につなげていくなども考えられます。以下の事例(女性技術者が少ない課題)についてご参照ください。





女性活躍推進データベース」では、様々な企業の一般事業主行動計画を確認することができます。業種や企業規模、所在地別などで検索することが可能なので、ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。










行動計画策定のポイント 解説者プロフィール



執筆者:人事労務コンサルタント・社会保険労務士 佐佐木 由美子氏

2005年3月、グレース・パートナーズ社労士事務所を開業、その後グレース・パートナーズ株式会社を設立し代表に就任。人事労務・社会保険面から経営を支援し、女性の雇用問題に積極的に取り組んでいる。新聞・雑誌等、多方面で活躍。
HP:https://gracepartners.jp/




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※掲載情報は2020年11月現在のものです。

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