頭は眠っている間によくなっている。 起きている間、脳は何かと忙しい。常に周囲を認知しているし(人が近づいてきた気配にさえ気づく)、思考を途切れさせることも難しい(座禅で無我の境地になれって言われたって雑念が消えないでしょう?)。認知と思考の無限ループ、それが覚醒しているときの脳のミッションだから。このため、脳には、脳神経回路を書き換えている暇はない。 脳の持ち主が眠れば、脳にはやっと暇ができ、脳神経回路を書き換える「真の学習」が可能になる。「覚える」のみならず、もっと高度な知恵やセンスに昇華させてもいるのである。 厳密には、覚醒していても、無我の境地にいるとき(ぼうっとしていたら急にアイデアが浮かぶようなとき。疲れてぼうっとしているのではなくて)には、脳神経回路の書き換えが起こっていたりもするのだが、これはいくつかの条件がとり揃ったときに、たまさか起こる偶発的なイベント。「バッハのシャコンヌを聞くと、必ず無我の境地になれる」という数学者もいるが、たいていは、自分で制御できる話じゃない。 けれど、いい眠りをすれば、誰の脳でも進化は起こる。また、新陳代謝も、眠っている間に加速する。 というわけで、私は午後の後半を〝いい眠り〟のために過ごす。眠っている間に脳と身体が必要とする栄養を確保するために、夕食を取る。眠りを促すために風呂に入る。日没後、トイレは足元の人感センサーランプのみ。網膜(目)を無駄に刺激するので、天井の電灯は点けない。網膜に光刺激があると、睡眠を誘発するホルモン・メラトニンの分泌を妨げるから。 そうそう、朝起きる時間も、いい眠りのために決めている。朝日の刺激でセロトニンの分泌が加速し始めた時刻から約15時間後、セロトニンがメラトニンに変化し始めるからだ。つまり、6時に朝日を目撃すれば、21時には自然に脳神経信号が沈静化し始めるということになる。 長く眠れればいい眠りと言うわけじゃない。大事なのは時間対効果(タイムパフォーマンス)。私はショートスリーパーなので、眠りの質をことさら大事にしているのである。ダイエットのために、オイル抜きの野菜だけ? それじゃ、新陳代謝がいまいちなので逆効果だし、脳が進化しないので、あまりにも残念。どうか、夕食、賢く食べて。
■脳が喜ぶ食事
なぜ、あなたの言葉は部下に伝わらないのか ~2つの脳が組織を強くする~
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経営者のための脳のトリセツ