脳は栄養で動いている。だから、脳をきちんと動かすために食べる———私は、脳の機能分析をする専門家として、徹底して、そう考えている。そういう意味で、最も危ないのは、低血糖だ。
脳神経信号は電気なのでエネルギーが要る。そのエネルギーは血糖だ。低血糖だと、脳神経信号がうまく発信できず、脳は正常に動けない。だるくてぼうっとしたかと思うと、イライラしてキレる。好奇心も働かず、集中力も続かない。勘も働かず、ユーモアも思いやりもない人になってしまう。「仕事ができないくせに、いばりちらして、思いやりもない」……それって、性格が悪いわけじゃなく、血糖値が乱高下してるだけかも。怖ろしいでしょう?
その低血糖を誘発するのが「糖質過多の食事をすること」という話は昼食編でさせていただいた。そうでなくても、食事と食事の間が長時間に及べば、当然、低血糖傾向になる。食事から摂った糖が底をつくからだ。そして、低血糖気味で食事を摂ると、脳が飢えているので、つい糖質に偏ったドカ食いになりやすいのも大問題。特に、昼食と夕食の間が空くと、遅く重めの夕飯が仇になって、睡眠の質を下げてしまう。
自分が、昼食後どれくらい空くと、タスク効率が下がったり、イライラしたりするかを、ある程度把握しておくといい。そして、そうなる前に、ちょこっと食べるのがおススメ。
パンやうどんで済ませてしまうと、けっこう早くタイムリミットがやってくる。また、「苦手な人と一緒にいるとき」とか「嫌な仕事をしているとき」にも、脳は早目に失速する。無意識のうちに、脳は何度も「嫌だ」「つらい」と感じるから。そのストレスも、糖をエネルギーにしている脳神経信号だからね。というわけで、嫌な上司と一日いれば、チョコでも食べなきゃやってられなくなるわけ。そう、「脳神経信号の無駄使い」からくる「間食にいきなりスイーツ」がストレス太りの原因でもある。
そんなふうに時と場合によって脳のタイムリミットは違うけど、「脳が失速する前に賢くちょっと食べる」、そんな知恵を持っておくと、血糖値はうまく保たれる(当然、血糖値を安定させるための間食メニューも重要だけど、それは佐藤先生にお任せしよう)。
脳という装置を、いかに効率よく合理的に動かすか。人生なんて、それに尽きる。カロリーだけの栄養管理や、「身体にいいから食べる、悪いから食べない」なんていう行き当たりばったりの食事では、残念ながら脳は制御できないのである。
■脳が喜ぶ食事
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