〔広報誌2022年4月号掲載〕
できるだけ疲れを感じずに、前向きな気持ちでよい判断をしたいーー
そのためのヒントは脳の機能を理解することにあるかもしれません。
今回は『妻のトリセツ』などの著書で知られる人工知能研究者の黒川伊保子氏に、
経営者のための脳の取り扱い(トリセツ)について伺いました。
黒川 伊保子(くろかわ・いほこ)氏
人工知能研究者
1959年長野県生まれ。奈良女子大学理学部卒業後、コンピュータ・メーカーにてAI開発に従事。コンサルタント会社、民間研究所を経て、(株)感性リサーチを設立。人材開発・社員研修として男女脳差理解によるダイバーシティ・コミュニケーション講座などを多数実施。『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』(
講談社)などの著書がある。
血糖値の乱高下は脳の働きを悪くする
脳を活性化させるにあたり、「
脳はさまざまな電気信号によって動いている電気回路。この装置をいかにうまく働かせられるかがポイントです」と黒川氏は語ります。
電気回路をきちんと機能させるためには、
電気を発生させるためのエネルギーを脳に安定供給することが不可欠です。脳のエネルギーとなるのは、ブドウ糖=血糖。つまり、血糖値を安定させる食事の摂り方が最も重要です。低血糖になると、頭が働かず、性格も悪くなります。低血糖をつくりだすのは、なんと
糖質の取りすぎ。「特に空腹時に糖質だけ摂取すると、血糖値が急上昇し、その反動で低血糖症に陥るので危険です。
タンパク質や野菜も摂取して、血糖値の上昇を緩やかにしましょう」(黒川氏)。
質のよい睡眠が脳を進化させる
脳を鍛えるには、質のよい睡眠をとることも重要です。「脳は寝ている間に記憶を再生・再構築し、電気回路を書き換えることで進化しているのです」と黒川氏。ここでいう質のよい睡眠とは、
眠りと目覚めを制御する脳内ホルモンを出せているかどうかです。人間の体は、夜
メラトニンが出ると眠くなり、翌朝
セロトニンが出るとすっきり目覚めます(図1)。この二つをきちんと出すには、早寝早起きなどの生活習慣と、光と闇をつくる環境が大切。さらに経営者の脳には、好奇心を生み出す
ドーパミン、集中力を生み出す
ノルアドレナリンといったホルモンも不可欠。この二つは、汗ばむ程度の運動で分泌されます。適度な運動による疲労感は睡眠にもよい影響を与えるので、週に数回取り入れましょう。
図1 良質な睡眠に欠かせないセロトニンとメラトニン
生活習慣を変えると脳が活性化する
ここまで脳という装置をうまく働かせるための主なポイントをお伝えしました。これを実践するには、まず生活習慣を見直してみてください。下記で紹介する7つのプログラムを続けるうちに、脳はそのプログラムを「クセ」として身に付け、血糖値をゆるやかに保ち、必要なホルモンを適切に分泌できるようになります。イケてる脳を目指し、7日間続けてみましょう。
点線で切り取ってデスク周りなどに貼ってご活用ください