2 寝付きがよくなるように、就寝の1時間半前にお湯に浸かろう
日本人の生活習慣で、劇的に睡眠の質を上げるアイテムがあります。それは、お風呂です。正確にいうと、寝る前に、40℃以上のお湯に浸かること。
以前、筑波大学附属駒場高校で、「現役東大合格者」の生活習慣が調査されたことがありました。早寝(受験生なのに夜の学習時間が1時間以内!)なのは予想どおりでしたが、なんとほぼ100%が「夜お風呂」派だったのです。この理由を睡眠学の専門家に尋ねてみたところ、「さもありなん」という回答が返ってきました。
頭寒足熱がいいとよくいわれますが、お湯に浸かると、脳内深部温度が下がり、脳神経信号が沈静化して、眠りに誘われるのだそうです。
バスタブに浸かると、体表面の温度(皮膚温)が一気に上がります。皮膚温が40℃以上になると、脳は警戒して、体内深部温度を下げ始めます。なぜなら、深部体温が42℃を超えると脳や臓器の機能が正常に働かなくなるからです。手のひらや足の裏などから熱が放出され、深部体温は下がります。これによって自律神経が活動時に働く「交感神経」から休息時に働く「副交感神経」優位に変わり、リラックスして自然と眠りに誘われます。
「湯冷め」は、風呂上がりに油断したから起こるのではなく、脳のメカニズムの一環だったのです。
睡眠学の専門家によれば、「夜お風呂」派は、深夜1時〜2時の時間帯のメラトニン分泌がさらに加速するとのことでした。2時の分泌量を、そのまま朝までキープするので、これはかなり有利なのがわかります。
ただし、就寝のどのくらい前にお風呂に入ればいいかは個人差があります。ご自身で適正時間を見つけてみてください。目安は1時間半前。ここを起点にして、足したり引いたりしてみてください。
そしてお風呂に入る準備を始める頃から、部屋の明かりを暗めにして、スマホやパソコンをオフにするなど、スムーズな眠りに向けての準備を始めるといいですね。
疲れてしまってお湯に浸かる元気もない、という場合は足湯でも大丈夫。足湯は、もう少し熱めの43℃くらいのお湯がおすすめです。湯おけの中に足を入れて、30秒〜1分くらいお湯をかけ流しすると、体の内部も温まってきて、全身がお湯に浸かるのと同様の効果が得られます。
小さなお子さんと、早い時間のお風呂に入ってしまって、自分が眠るためのリラックス効果はないみたい……なんていう方にも、「追い足湯」をおすすめしています。子どもたちが寝静まってから、ゆっくり足湯をしながら読書、なんていかがでしょうか?