2 部下の提案は「いいね」で受ける
部下に対してはちやほやしたり、やたらと鼓舞したりする必要はありません。仕事について客観的で適正な評価をすればいいのです。
ただし、部下を指導したり部下にアドバイスしたりする時には、「主語なしの否定」表現をしないように気を付けてください。「無理だよ」「全然ダメだろう」といった日本語の「主語なし否定文」は受け手にとってはとても暴力的な言葉になります。
主語がない否定表現を聞いた時、受け手はそこに「世間」「社会」といった暗黙の主語を感じます。つまり世の中全体から否定されている気がします。社長や上司は単純に「このやり方ではうまくいかない」「このアイデアはイマイチだ」という意味でアドバイスしているつもりでも、「おまえはダメなやつだ」と全人格を否定されたように感じるのです。
英語では相手の意見を否定する時は「私はそのプランは無理だと思う」「私はあなたの仕事のやり方に問題があると感じる」といったいい方になります。必ず「私は」という主語が入ります。「無理だろう」「ダメだろう」という頭ごなしないい方とはずいぶん印象が異なります。
部下への指導やアドバイスにあたっては、「僕はいまの君のやり方には改善点があると思うのだが」と主語を付けた表現を心がけてみてください。「僕は」「私は」という主語を付けようとすると、表現自体が変わってきます。頭ごなしな表現はできなくなります。
部下から仕事のやり方や新しい企画の「提案」をされた時の対応も大切です。その提案の可否にかかわらず、まずは「いいね」で受けましょう。提案内容に対してではなく、提案をしてきた部下に対する「いいね」です。「提案をしてきた部下の心根」をまず評価するのです。たとえその提案が箸にも棒にもかからなくても、提案してきたことを褒めましょう。
その後で、提案内容について否定的意見があるなら、「でも僕はこのアイデアの実現は難しいと思う」と主語のある表現で伝えましょう。くれぐれもいきなり「この資材調達はどうする気? 無理だよ」などと頭ごなしにいわないことです。せっかく考えた提案を頭ごなしに否定された部下は、モチベーションが大幅に低下し、それ以降、提案するのを躊躇してしまいます。そして、脳は提案を止めると、発想そのものを止めてしまうのです。なぜなら、脳は1秒たりとも無駄なことをしない装置だからです。社員の発想力をなきものにする...会社にとって大きな損失ですよね。もちろん、家族の間でも同じこと。というより、家庭で子どもたちの発想力を奪ってしまったら、人生の根幹にかかわります。職場より深刻かもしれません。
否定する時は「僕は」「私は」という主語とともにいってみましょう。これを心がけると、仕事においても、家庭においても、人間関係がとてもよくなるのではないでしょうか。