3 社長がよい表情を浮かべれば、部下も前向きな気持ちになる
よきリーダーには、「人を前向きな気持ちにさせる力」があります。実は、言葉を発する前に勝負は決まっていると知っていましたか? 人を前向きな気持ちにするのは、「表情」の仕事だからです。
私たちの脳には「ミラーニューロン(鏡の脳細胞)」と呼ばれる細胞があります。目の前の人の表情や所作を、自分の神経系に丸ごと移しとってしまう能力を担保しています。目の前の人の満面の笑みにつられて、笑顔になってしまうことがありまよね。目の前の人が強くうなずけば、ついうなずいてしまったり……。そうそう、「あっち向いてホイ」で負けるのは、ミラーニューロンがうまく働いているからなのです。つまり表情や所作は、うつるんです。
そして、もう一つ大事なことがあります。表情は出力ですが、入力にもなるということです。うれしいから、うれしい表情になるわけですが、うれしい表情がうつると、うれしい表情の時の脳神経信号が誘発されます。つまり、笑顔の人は、人を笑顔にして、うれしい気持ちを誘発させるのです。逆に、後ろ向きで不満げな表情の人は、人を後ろ向きで不満げな気持ちにさせてしまいます。表情は、人の気持ちを操作する最も直接的な手段です。
人の上に立つ者は、表情に責任があると思います。なぜなら、部下は基本的に社長や上司の気持ちや考えを知ろう、共感しようとしているので、余計に社長や上司の表情の影響を受けやすいからです。
リーダーたるもの、「前向きで、好奇心溢れるうれしそうな顔」をしていなければなりません。また、プロフェッショナルとして顧客に接する時も同じです。導かれる者に前向きな気持ちをあげるためであり、ひいては、それが自分の利益にもなります。なぜなら、前向きな部下や前向きなクライアントに囲まれることになるからです。
もちろん、日々のタスクの中で、真剣な表情、あるいは深刻な表情にならざるを得ないこともあるでしょう。そのような表情をすべて笑顔に変えるべきだとはいいません。
コツがあります。その日最初に会う時、会議の始まる時、昼休み明け、廊下ですれ違う時、こういう気持ちの切り替えポイントで「前向きでうれしそうな顔」を遂行しましょう。周囲のやる気や発想力がみるみる上がっていきますよ。そして家族に対してはぜひ、「おかえりなさい」と「いってらっしゃい」の時に、素敵な笑顔を見せてください。夫婦仲、家族仲がまったく違ってくるはずです。