中堅・中小企業のための女性活躍推進~競争力強化に向けた取り組み~
2016年4月1日に施行された「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)」によって、300人以下の労働者を雇用する企業にも、女性の活躍に関する計画の策定や、情報公開などが努力義務として定められました。中小企業の皆さまをサポートするあんしん財団では、「中堅・中小企業のための女性活躍推進」と題したセミナーを開催。コンサルタントの田中良憲氏をお迎えして、中小企業が考えるべき女性の活躍について講演をしていただきました。
※レポートに記載されている関係者の所属・役職名、情報等はセミナー開催当時のものです。
■ POINT.1経営課題解決の一環として推進
■ POINT.2「中堅・中小企業のための女性活躍推進~競争力強化に向けた取組み~」サマリー
■参加者VOICE!
・開催日:2016年7月28日(木曜日)10:00~12:00
・会 場:東京都・あんしん財団内会議室
・講 師:田中良憲氏
ダイヤモンドリース(株)(現:三菱UFJリース(株))にて資産管理、営業業務を経て、2000年に㈱日本能率協会コンサルティング(JMAC)に入社。以後、業務プロセス改革や、情報システム導入による生産性向上、サービスレベル・品質向上などの改革テーマの支援にあたる。近年では(株)ワーク・ライフバランスの加盟ワーク・ライフバランスコンサルタントとして長時間労働の解消、女性活躍推進、ダイバーシティ実現支援にも取り組んでいる。
POINT.1経営課題解決の一環として推進
「経営課題解決の一環として推進していく」という考えのもと、以下の3点について田中氏にお話ししていただきました。
1.女性活躍推進の背景
少子高齢化にともなう労働力不足によって男女共に働くことがますます求められるようになる中、労働生産性を向上させるための「ワーク・ライフバランス」が、いま必要とされている。
2.中小企業にとっての女性活躍推進
従業員数が多く組織や価値観が硬直しがちな大企業よりも、実は少人数で機動性のある中小企業のほうが、女性が活躍しやすい職場環境づくりや制度の整備が進めやすい。
3.女性活躍を軸においた競争力強化への取組み方
女性活躍のための前提となる“働きやすい雰囲気”、それを裏付ける環境・風土の見直しはできているか? キャリアアップに向けた仕事の割り当てなど、自社の状況と課題を把握したうえで取組みを進めていくことが重要である。
POINT.2「中堅・中小企業のための女性活躍推進~競争力強化に向けた取組み~」サマリー
○ワーク・ライフバランスが女性活躍推進に必要
少子高齢化や社会環境の変化により、日本の社会や産業の構造は大きく変わりました。知的労働を主とした職業の比率の高まりから、現在では男女ともに短時間で高い成果・生産性を挙げるために、多様な人材を積極的に活用することが求められています。ところが、日本では長時間労働が慢性化しており、時間あたりの労働生産性は先進国7ヵ国の中で最下位となっています。GDPが世界3位であることを考えると、時間あたりの国際競争力が低いといわざるを得ません。 また、女性活躍の点でも日本のGEM※は世界109ヵ国中で57位といずれもかんばしくないのが現状です。そこで求められるのが、ワーク・ライフバランス(以下、WLB)の必要性です。WLBは「仕事と私生活のバランスをとること」などと理解されがちですが、「仕事で成果を挙げることを前提に、生活をどう充実させていくか」というのが本来のWLBの考え方です。このWLBは、“仕事と生活両面での気付きから、仕事面で新しいアイデアを得る”、あるいは“仕事での気付きを生活にも活かす”このような相乗効果が期待されることからワーク・ライフシナジー(以下、WLS)と呼んでいます。まずは、短時間でより成果の高い仕事を行うために、WLSのサイクルを効率的に回すことが大切だと考えています。出産や育児、介護などで特別休暇や時間短縮勤務を選択する女性が増えている現在、WLBに基づいて女性が活躍できる制度や風土を整えている職場こそが、いま求められている企業のあり方なのです。※GEM:ジェンダーエンパワーメント指数(Gender Empowerment Measure)のことで、政治分野および経済分野への女性の参画を示す指数
○自社の状況と課題の把握が取組みの第一歩
一般的に、大企業のほうが制度や仕組みの制定が進み、女性が働きやすい環境が整っているように思われがちです。しかし、制度の制定自体が目的化しており、運用は後回しになっているケースが多く、さらには従業員数や組織規模が大きいため、働き方の価値観を一定の方向に向けるのに時間がかかるなど、実際にはスムーズに進んでいない企業が多いのが実態です。一方で、中小企業の場合、従業員数も少なく組織規模も小さいので、経営トップがその気になれば、職場環境や制度の整備など、一気に進められるという側面を持っています。そのメリットを生かして、女性活躍を軸にした企業の競争力強化を展開することが、いま中小企業には求められているのです。 体的な方法としては、女性従業員が社内で期待され、果たすべき役割を明確化したうえで優秀な人材を積極採用する。もしくはすでに自社で働いている女性従業員のスキルや経験を高め、業務の効率化や生産性の向上をはかり、業績の向上につなげていくという道筋が考えられます。そのためにも、女性が本来の力量を発揮できるように制度や仕組みをつくり、職場の環境を整えていくことが大切なのです。 とはいえ、自分の会社はどこから手を付ければいいのかわからない場合、まずは自社の状況と課題の把握からはじめましょう。課題が明確化したら、社員皆でどうすれば改善につながるのか検討を行い、できるところから取り組んでいくことをおすすめします。
参加者VOICE!
・バランスではなくシナジーであるという提起、経営課題の解決のための避けられない取り組みだという提起の説得力があり感心した
・社員の意識改革に役立ちました
・ライフワークバランスについて考えるきっかけとなった